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(1)非小細胞肺がんについて

国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科  外来医長 後藤 悌

用語名 解説 資料・URL等
用語名 がん細胞の特徴(タンパク質の発現・遺伝子異常) 解説

 それぞれのがん細胞は、顕微鏡での「見た目」で基本的な組織型に分類されます(https://ganjoho.jp/public/cancer/lung/about.html 項目4)。


表1 主な肺がんの組織型とその特徴


 最近では、特殊な検査を用いて分子・タンパク質レベルで解析することができます。このような分子生物学的な特徴によって、さらに細かく分類することができるようになり、個々人のがん細胞の特徴を捉えて治療することができるようになりました。

人間のすべての細胞には、タンパク質を作るための「設計図」である遺伝子があります。この遺伝子に異常が生じると、間違ったタンパク質が作られてしまします。その中には、細胞の分裂を促進し、がん細胞となるものがあります。遺伝子の異常にはEGFR、ALK、ROS1、BRAF、NTRK、MET、RET、KRAS、HER2など、多くの種類があります。これらを網羅的に調べることを遺伝子パネル検査と言います。EGFRの異常のある患者さんに、ALKの異常に有効な治療薬を使っても効果がありません。それぞれの異常(標的)にあわせた治療が開発されています。

 タンパク質も、様々な理由でがん細胞で増えていることがあり、「Xタンパク発現の亢進」、「Xタンパク陽性」などと記載されることが多いです。


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(2)検査について

国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科  外来医長 後藤 悌

用語名 解説 資料・URL等
用語名 ステージ(病期)分類の概略と局所進行の定義 解説

 肺癌の治療はステージによって大まかな治療方針が決まります(https://ganjoho.jp/public/cancer/lung/treatment.html 図4)。


図4 非小細胞がんの治療の選択

日本肺癌学会ウェブサイト「肺癌診療ガイドライン2019年版 悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む」より作成


 ステージは病気の拡がりに応じてI〜IV期に分類されています。一般的には原発(最初にできたところ)から、リンパ、血液、体腔液(胸水・腹水など)を介して腫瘍は拡がっていきます。リンパ液は最終的に血液に戻りますが、リンパ節が関所のような役割を担っているために、リンパ節にがん細胞が留まることもあります。

 肺癌が原発から一定の範囲にしか拡がっておらず、手術ですべてを摘出したり、放射線によって病期のすべてに十分なエネルギーを照射したりすることができれば、これらの治療によって完治を目指す治療が可能となります。手術と放射線治療は局所治療と称され、病変が限局しているときには第一選択となる治療です。一方で、血液などを介して全身に拡がっていたり、手術ができないような大切な臓器とくっついていたり、放射線をすべてに照射することが安全性から不可能な場合は薬物療法が中心となります。とくに、病変が原発とリンパ液・リンパ節に限局して、血液を介して全身に拡がってはいないものの、手術や放射線治療ができない状況を局所進行と称しています。

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(3)臨床試験について

国立がん研究センター 研究支援センター  生物統計部長 柴田大朗

用語名 解説 資料・URL等
用語名 治験 解説

 新しい医薬品を世に出すためには、患者さんがその医薬品を使った時の副作用や効果に関する情報を集め、評価することが必要になります。そのための仕組みを臨床試験と呼びます。新しい医薬品を病院等で使えるようにするためには厚生労働省の承認が必要になりますが、その承認の判断根拠となる情報を収集する臨床試験を治験と呼びます。

 厚生労働省の承認が無く治験が実施されている段階の医薬品は、その有効性・安全性がまだ確認されていないため、治験の結果が芳しくなく効果が不十分であるとか、副作用の出かたが受け入れがたいようであれば厚生労働省からの承認が得られないこともあります。ただし、そのような状況であっても参加される患者さんへの不利益ができる限り生じないよう、厳格な管理のもと治験が実施されるルールになっています。そのために、患者さんが希望すれば常に治験に参加できるとは限らず、合併症の有無や様々な検査の結果によっては治験に参加できない場合があります。そのため、治験を実施している医療機関の医師によって参加できる条件を満たしているかどうか、確認が必要です。なお治験に参加する場合には、患者さんご自身が治験を実施している医療機関で治験の内容に関する丁寧な説明を受けた後に、文書による同意の意思表示を行い、その後正式な登録の手続きが進められることとなります。

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用語名 ランダム化・無作為化 解説

 新しい医薬品の効果や副作用等を調べるためには、既に医療現場で使われている治療法との比較や、場合によっては現在医療現場で使われる最善の治療法とプラセボと呼ばれる薬剤を模したもの(偽薬と言われることもあります)とを組み合わせた治療法との比較を行う必要があります。それが必要になるのは、患者さんの病気の経過が多様であり、新しい医薬品を使ったときの患者さんの状態の変化が、新しい医薬品の影響による変化なのか、病気の経過による変化なのかを判断することが通常は区別できないためです。また、比較をする相手の治療法を受ける患者さんの状態と新しい医薬品を受ける患者さんの状態との間に病気の重さや様々な検査結果の違いが大きいと、二つの治療法の間の違いが薬の影響による違いなのか患者さんの状態の差による違いなのかの区別がつきません。そのため、二つの治療法を受ける患者さんの状態が似た状況になるよう、患者さんや担当される医師の判断によらず、いずれかの治療法を作為無く割り当てる方法が採られます。それを専門用語でランダム化、あるいは、無作為化などと呼びます。治験の中には、全ての患者さんが新しい医薬品の投与を受けるものもありますし、ランダム化によって既存の治療法と新しい医薬品のいずれの投与を受けるかが決まるものもあります。なお、がん領域では、通常、効果が無い治療法(プラセボ・偽薬のみによる治療)と新しい医薬品との間でランダム化が行われる試験は行われず、少なくとも通常の診療で受けることの出来る治療と新しい医薬品との間でランダム化が行われます。病気によってはランダム化が非倫理的であると判断される状況もありますが、開発中の段階の医薬品の多くは、その効果が示せない、副作用が想定以上であるなどの理由で開発を断念することになり、新しい医薬品の投与を受けることが確実に良い治療を受けることになるとは限らないため、治験開始前に専門家による評価を受け、ランダム化が妥当であることの確認がなされています。

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用語名 盲検化・二重盲検化 解説

 既に医療現場で使われている治療法と新しい医薬品を比較する際に、どちらの治療を受けているかがわかると、効果や副作用の判定に事前の思い込みによる偏りが生じてしまうことがあります。例えば、新しい医薬品に対する期待が大きいと効果を過大評価してしまうことがあります。そのため、効果や副作用等の評価をする際に、思い込みによる影響が入らないよう、どちらの治療法を受けているかわからないようにして新しい医薬品の評価をすることがあります。その方法のことを盲検化(もうけんか)と呼びます。患者さんご自身と医師の両方がいずれの治療を受けているかわからない状態で行われる場合には、二重盲検化と呼ばれます。

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用語名 標準治療 解説

 ひとつひとつのがんに対して複数の医薬品が承認されていることがありますし、また、医薬品以外の治療手段が用いられることもありますが、そのような様々な治療方法のうち、専門の医師の間で最善の治療方法だと考えられている治療法のことを標準治療と呼びます。標準治療という表現から最先端の治療ではないと誤解される方も多いのですが、現時点での医学的な評価が確立した最先端の治療のことを標準治療と呼びます。なお、治験の段階にある新しい医薬品はその効果がまだわかりませんし副作用がどのくらい強いのかもわかりませんので、最先端の治療と考えるのは危険です。ただし、治験などで効果や副作用が詳しく調べられ、既に医療現場で使われている治療法より良いものであることがわかれば、それが新しい標準治療として受け入れられていくことになります。

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用語名 プラセボ 解説

 プラセボとは薬剤を模した、人の体に医薬品として作用しないものを指します。偽薬という表現が使われることもあります。どのような治療法を受けているかを知っていることが患者さんの身体的・心理的反応や日々の行動、効果や副作用等を判定する医師の判断に影響を与えることがあります。そのような影響で新しい医薬品の影響を過大評価・過小評価することが無いよう、プラセボを用いた治験がなされることがあります。なお、重篤ではない疾患の場合には一切の治療なしに(日常診療で受けられる治療よりも治療効果が劣る可能性がある状況で)プラセボが使われるケースがありますが、がん領域の治験では通常は日常診療より劣る治療がなされること(一切の治療なしにプラセボだけが使われること)はありません。それぞれのがんに対するその時点での最善の治療にプラセボを上乗せする形のプラセボ投与がなされることが一般的です。

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用語名 第Ⅰ相、第Ⅱ相、第Ⅲ相 解説

 医薬品の開発は段階を踏んで行われます。がん領域の新しい医薬品の開発は、一般には、患者さんを対象として副作用等の毒性を調べたり、患者さんが耐えられる用量を調べたりする段階(第Ⅰ相)を経て、特定のがんに対する短期的な効果を探索的に調べる段階(第Ⅱ相)、がんが大きくなるまでの時間や患者さんがご健在の期間に与える効果を調べて新しい医薬品に効果があることを検証する段階(第Ⅲ相)の3つのステップで進められることが一般的です。

 ただし、最近はこの3つの段階のそれぞれを組み合わせた治験(第Ⅰ/Ⅱ相試験と呼ばれる治験や、第Ⅱ/Ⅲ相試験と呼ばれる治験など)が行われるケースや、第Ⅰ相の治験に参加される患者さんの数を増やし、その情報から新しい医薬品の効果を確認するという例外的なパターンもあります。そのため、一般には第Ⅰ相よりも第Ⅲ相の段階の治験の方が新しい医薬品の効果や副作用に関する情報が多く知られている傾向にありますが、参加を希望される治験毎に状況が異なる場合もあります。

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用語名 探索的試験、検証的試験 解説

 医薬品の開発は一つの治験結果だけで終わることはまれで、通常は効果や副作用等の傾向を調べる段階を経て、既存の治療法との比較を通して確かに効き目が存在することの確認をする段階へと進みます。この前者の治験を探索的試験、後者の治験を検証的試験と呼びます。一般的には第Ⅰ相、第Ⅱ相の治験を探索的試験、第Ⅲ相の治験を検証的試験と呼ぶことが多いです。逆に、がん領域では、ランダム化試験は検証的試験であることが多いですが、時に探索的試験でランダム化が行われるケースもあり、ランダム化試験であるから開発の段階が進んでいるという場合ばかりではありません。個別の治験に参加される際に、どのような段階の治験であるのかを確認して頂くと良いです。

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用語名 適格基準、除外基準 解説

 治験の段階での新しい医薬品の効果や副作用等の出かたは不確実です。そのため、患者さんの安全を守るよう合併症の有無や検査結果等に基づき一定の条件を満たす方のみが治験に参加できるよう設定されることが一般的です。また、効果を厳密に評価するために参加できる患者さんの条件を定めている場合もあります。このような条件のことを、適格基準、除外基準などと呼びます。医薬品によって異なりますが、一般的な傾向として、第Ⅰ相の段階の治験よりも第Ⅲ相の段階の治験方が参加できる基準が緩やかになっています。

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