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(1)非小細胞肺がんについて

国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科  外来医長 後藤 悌

用語名 解説 資料・URL等
用語名 がん細胞の特徴(タンパク質の発現・遺伝子異常) 解説

 それぞれのがん細胞は、顕微鏡での「見た目」で基本的な組織型に分類されます(https://ganjoho.jp/public/cancer/lung/about.html 項目4)。


表1 主な肺がんの組織型とその特徴


 最近では、特殊な検査を用いて分子・タンパク質レベルで解析することができます。このような分子生物学的な特徴によって、さらに細かく分類することができるようになり、個々人のがん細胞の特徴を捉えて治療することができるようになりました。

人間のすべての細胞には、タンパク質を作るための「設計図」である遺伝子があります。この遺伝子に異常が生じると、間違ったタンパク質が作られてしまします。その中には、細胞の分裂を促進し、がん細胞となるものがあります。遺伝子の異常にはEGFR、ALK、ROS1、BRAF、NTRK、MET、RET、KRAS、HER2など、多くの種類があります。これらを網羅的に調べることを遺伝子パネル検査と言います。EGFRの異常のある患者さんに、ALKの異常に有効な治療薬を使っても効果がありません。それぞれの異常(標的)にあわせた治療が開発されています。

 タンパク質も、様々な理由でがん細胞で増えていることがあり、「Xタンパク発現の亢進」、「Xタンパク陽性」などと記載されることが多いです。


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(2)検査について

国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科  外来医長 後藤 悌

用語名 解説 資料・URL等
用語名 ステージ(病期)分類の概略と局所進行の定義 解説

 肺癌の治療はステージによって大まかな治療方針が決まります(https://ganjoho.jp/public/cancer/lung/treatment.html 図4)。


図4 非小細胞がんの治療の選択

日本肺癌学会ウェブサイト「肺癌診療ガイドライン2019年版 悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む」より作成


 ステージは病気の拡がりに応じてI〜IV期に分類されています。一般的には原発(最初にできたところ)から、リンパ、血液、体腔液(胸水・腹水など)を介して腫瘍は拡がっていきます。リンパ液は最終的に血液に戻りますが、リンパ節が関所のような役割を担っているために、リンパ節にがん細胞が留まることもあります。

 肺癌が原発から一定の範囲にしか拡がっておらず、手術ですべてを摘出したり、放射線によって病期のすべてに十分なエネルギーを照射したりすることができれば、これらの治療によって完治を目指す治療が可能となります。手術と放射線治療は局所治療と称され、病変が限局しているときには第一選択となる治療です。一方で、血液などを介して全身に拡がっていたり、手術ができないような大切な臓器とくっついていたり、放射線をすべてに照射することが安全性から不可能な場合は薬物療法が中心となります。とくに、病変が原発とリンパ液・リンパ節に限局して、血液を介して全身に拡がってはいないものの、手術や放射線治療ができない状況を局所進行と称しています。

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(3)血液がんについて

公益財団法人がん研究会有明病院 血液腫瘍科 部長 丸山 大

用語名 解説 資料・URL等
用語名 血液がんの発生 解説

 血液がんは造血細胞から発生する悪性腫瘍の総称であり、それぞれの発生段階や細胞起源から、リンパ腫、白血病、骨髄腫に大別されます(図1)。

 それぞれは異なる疾患であり、その診断方法、検査方法、治療方針も異なります。


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(3-1)リンパ腫について

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用語名 リンパ腫について 解説

 リンパ腫は体内のリンパ組織から発生する悪性腫瘍です。リンパ腫は、国際的な病型分類であるWHO分類に基づいて診断・分類されています。


 WHO分類では、がん化したリンパ球の成熟段階によって「前駆型」(幼弱な若い段階でのがん化)と「成熟型」(成熟した段階でのがん化)に分けられます。


 前駆型は、リンパ芽球性白血病/リンパ腫としてそれぞれB細胞性、T細胞性、NK細胞性に分けられます。前駆型は急性リンパ性白血病と一連の疾患として扱われます。


 成熟型はホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、T/NK細胞リンパ腫に大別され、いわゆる「リンパ腫」とは成熟型を指します。このうち、B細胞リンパ腫が全体の70%強と最も頻度が高く、次いでT/NK細胞リンパ腫が20%弱、ホジキンリンパ腫は10%弱の発症頻度です。

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用語名 ①リンパ腫の症状 解説

  リンパ腫の多くはリンパ節の腫れを伴いますが、その多くは痛みを伴いません。リンパ節やリンパ球は全身に分布しているため、全身のあらゆる臓器へ出現することもあります。


 時に脳や脊髄などの中枢神経系病変を認めることもあります。リンパ腫による症状の多くはリンパ腫病変が出現した部位によるため、「リンパ腫に特徴的な症状」はあまりありません。


 全身症状(B症状といいます)としては、原因不明の発熱、尋常ではないほどの寝汗、急激な体重減少などを伴うこともあります。

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用語名  ②リンパ腫の診断 解説


 リンパ腫の診断は、病変から組織を採取 (生検といいます) し、顕微鏡等で調べる病理組織学的検査が必須です。 病理組織学的検査なしに、症状、CTやPETなどの画像検査や、血液検査だけでリンパ腫を確定診断することは出来ません。


 リンパ腫は多くの病型に分類されます。リンパ腫病型によって治療方針が異なるため、正確な診断をつけることが重要です。リンパ腫は進行・増悪する速度によって、おおまかに表1のような「悪性度」に分類されています。


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用語名  ③リンパ腫の病期(ステージ)診断 解説

リンパ腫の全身の病変分布により、I期からIV期までに病期分類されます(図2)。

 病期診断においては、従来から血液検査、CT検査、骨髄検査などが施行されます。

さらに現在ではFDG-PET/CT検査を導入したLugano規準が用いられています。リンパ腫病型によりますが、病期によって治療方針が変わる(放射線治療の適応や、化学療法の種類や回数など)ことがあるので、正確な病期診断が重要です。


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用語名  ④リンパ腫の治療 解説

リンパ腫の治療の柱は化学療法ですが、具体的な治療方針は病型によって異なります。

低悪性度リンパ腫の一部では無治療経過観察(ただちに治療を開始せずに定期的な経過観察を行うこと)や局所治療(放射線治療など)が選択できる場合もあります。

中・高悪性度リンパ腫では、原則として化学療法が勧められます。病型によって、勧められる化学療法の内容(薬剤、治療強度、スケジュールなど)が異なります。

 また、患者さんの年齢や合併症などの状態によっても投与できる治療内容が異なることがあります。

再発時の治療選択肢はさらに多岐にわたります。病型や病状によっては自家造血幹細胞移植併用大量化学療法が選択されます。

 また、同種造血幹細胞移植(自分以外のドナーさんから、造血幹細胞を移植すること)や、免疫細胞療法であるキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)療法が選択されることもあります。

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(3-2)白血病について

用語名 解説 資料・URL等
用語名 白血病について 解説

 白血病には、急性白血病と慢性白血病があり、さらにそれぞれが骨髄性とリンパ性に大別されます(表2)。


 主に急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病に大別されます。


 血液検査、骨髄検査、遺伝子検査、画像検査などによって診断されますが、それぞれの疾患の病態、臨床経過および治療方針は大きく異なります。頻度は少ないですが、他の悪性腫瘍に対する化学療法や放射線治療を受けた患者さんで数年以上を経て白血病を発症することもあります(治療関連白血病と言います)。


 いずれも治療時には化学療法を行いますが、特に急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病については同種造血幹細胞移植の適応となることがあります。慢性リンパ性白血病は、骨髄や血液中に腫瘍細胞が出現することから「白血病」という疾患名ですが、その腫瘍細胞の本体は成熟Bリンパ球です。


 現在では、同じ細胞起源で骨髄や血液中に腫瘍細胞が少ない、あるいは認めずにリンパ節病変などの腫瘤性病変を認めるB細胞リンパ腫である「小リンパ球性リンパ腫」と一連の疾患(慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫)として分類されています。






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用語名 ①急性骨髄性白血病 解説

病態

 骨髄で骨髄芽球とよばれる幼若な細胞が増加し、正常の成熟白血球や赤血球、血小板が減少する疾患です。

 発熱、倦怠感、紫斑などが初期症状ですが、急激な経過をたどり、生命に関わる状態となるため、迅速な診断、治療導入が重要です。


治療 

 強力な導入療法を行い、骨髄検査で寛解を確認したのち、引き続いて地固め療法を行います。

 染色体・遺伝子検査の結果、適応ある分子標的薬を併用することもあります。

 若年患者さんの病状によっては同種造血幹細胞移植を検討します。

 再発・治療抵抗性の患者さんや、高齢の患者さんでは分子標的薬や低用量化学療法を組み合わせた治療が選択されることもあります。

 疾患や病状によって臨床試験の選択肢が存在する場合もあります。


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用語名  ②急性リンパ性白血病 解説


病態 

 骨髄でリンパ芽球とよばれる幼若な細胞が増加し、正常の成熟白血球や赤血球、血小板が減少する疾患です。

 発熱、倦怠感、紫斑などが初期症状ですが、急激な経過をたどり、生命に関わる状態となるため、迅速な診断、治療導入が重要です。

 主な治療方針としてはBCR-ABL融合遺伝子陽性のPhiladelphia染色体 (Ph) 陽性急性リンパ性白血病と、Ph陰性急性リンパ性白血病とに大別されます。


治療

 Ph陽性急性リンパ性白血病では、分子標的薬であるチロシンキナーゼ阻害剤と化学療法との併用療法を行います。

 強力な寛解導入療法を行い、骨髄検査で寛解を確認したのち、引き続いて地固め療法、維持療法と施行します。

 若年患者さんでは同種造血幹細胞移植を積極的に検討します。

 Ph陰性急性リンパ性白血病では、強力な寛解導入療法を行い、骨髄検査で寛解を確認したのち、引き続いて地固め療法、維持療法と施行します。

 若年患者さんでは病状により同種造血幹細胞移植を積極的に検討します。

 再発・治療抵抗性の患者さんでは、イノツズマブ・オゾガマイシン、ブリナツモマブなどの新規薬剤が使用可能です。

 若年患者さんでは積極的に同種造血幹細胞移植を検討します。疾患や病状によって臨床試験の選択肢が存在する場合もあります。


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用語名  ③慢性骨髄性白血病 解説

病態 

 BCR-ABL融合遺伝子が原因となり、骨髄で異常な造血の増殖がおこります。

 慢性期、移行期、急性転化期に分類されますが、慢性期はほとんど無症状で健診などの血液検査で発見されることも多い疾患です。


治療 

 慢性期の場合(大半の患者さんが該当します)、BCR-ABL融合遺伝子へ作用するチロシンキナーゼ阻害薬での治療が勧められます。

 チロシンキナーゼ阻害剤として複数の薬剤が使用可能です。それぞれ異なる特徴(投与量、投与方法、副作用など)があります。

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用語名  ④慢性リンパ性白血病 解説

病態

 慢性リンパ性白血病は、骨髄や血液中に腫瘍細胞が出現することから「白血病」という疾患名ですが、その腫瘍細胞の本体は成熟Bリンパ球です。

 現在では、同じ細胞起源で骨髄や血液中に腫瘍細胞が少ない、あるいは認めずにリンパ節病変などの腫瘤性病変を認めるB細胞リンパ腫である「小リンパ球 性リンパ腫」と一連の疾患(慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫)として分類されています。


治療

 慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫は緩慢な経過をとる低悪性度リンパ腫です。

 国際的な規準に則り、無症状で検査値異常が顕著でない場合、原則として無治療経過観察が選択されます。

 一方、病状が進行した場合では国際的な規準に則って、治療開始が勧められます。

 慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫には、分子標的薬が有効です。

 近年治療開発が盛んな疾患です。




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用語名 ⑤骨髄異形成症候群 解説

 骨髄異形成症候群は骨髄中の造血幹細胞に異常が生じて血球の成長に障害が起こり、正常の成熟した血球が造られなくなり、骨髄や血液中に「異型」な血球が出現します。

 このため、白血球減少、貧血、血小板減少といった「血球減少」が起こります。

 また、骨髄異形成症候群では未熟な造血細胞(芽球)が増生することがあり、一部の患者さんでは急性骨髄性白血病へ進展することがあります。

 一般的には高齢者に発症する疾患です。

 頻度は少ないですが、他の悪性腫瘍に対する化学療法や放射線治療を受けた患者さんで数年以上を経て骨髄異形成症候群を発症することもあります(治療関連骨髄異形成症候群と言います)。

 画一的な疾患ではなく、骨髄異形成症候群と言っても多様な病態を取ります。


骨髄異形成症候群の治療 

 低リスクであれば無治療経過観察、あるいは輸血や造血因子の補充などが検討されます。

 特徴的な染色体異常(5番染色体の長腕欠損: 5q-症候群と言います)では、免疫調整薬のレナリドミドが使用可能です。

 高リスクであれば、DNAメチル化阻害剤や化学療法の導入を行います。

 若年患者さんの病状によっては同種造血幹細胞移植を検討します。

 経過中に急性骨髄性白血病に進展した場合は、急性骨髄性白血病に準じた治療方針が選択されます。

 疾患リスクや病状によって臨床試験の選択肢が存在する場合もあります。



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(3-3)多発性骨髄腫について

用語名 解説 資料・URL等
用語名 多発性骨髄腫について 解説

  多発性骨髄腫は、リンパ球の仲間である形質細胞ががん化した「形質細胞腫瘍」の最も代表的な疾患です。

  患者さんは高齢者に多く、男性に多い傾向があります。

  腫瘍細胞が産生する異常な免疫グロブリン(M蛋白)が増加します。M蛋白の種類によってIgG型、IgA型、Bence-Jones型、IgD型、非分泌型などに分類されます。

  発症初期には無症状であることが多く、健康診断の血液検査で高蛋白血症や軽度の貧血・腎障害などで異常を指摘されることも少なくありません。病状が進むと、貧血、血小板減少などの造血障害、腎障害、骨折・骨溶解・骨腫瘤などの骨病変、高カルシウム血症、アミロイドーシス、過粘稠度症候群などを呈することがあります。

  胸椎・腰椎などの圧迫骨折や病的骨折(通常では骨折しないような軽度の外力による骨折)などで整形外科への受診を契機に多発性骨髄腫の診断につながることもあります。

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用語名  ①多発性骨髄腫の診断 解説

  多発性骨髄腫の診断のためには、血液検査、尿検査、骨髄検査、心電図、心臓超音波、全身単純CT、FDG-PET/CT、レントゲン、MRIなどによる全身精査が必要です。

特に骨病変による骨痛や、腎障害などの「臓器障害」を既に認める患者さんでは、診断と治療が急がれます。

 なお、多発性骨髄腫が疑われた場合、あるいは既に診断されている患者さんでは、造影剤の使用は原則として禁止です(腎傷害が急激に増悪することがあります)。

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用語名  ②多発性骨髄腫の治療 解説

 多発性骨髄腫は一般的に進行が緩慢で長い経過をとる疾患です。近年の治療開発により、その治療成績は改善が続いています。ただし、現時点でもほとんどの患者さんでは「治癒(病気が治ること)」は難しい疾患です。

多発性骨髄腫のうち、「くすぶり型」と診断された患者さんでは原則として無治療経過観察が選択されます。活動性のある治療適応の多発性骨髄腫では化学療法の導入が勧められます。


<移植適応の患者さん>

 治療適応の多発性骨髄腫では、自家末梢血造血幹細胞移植併用大量化学療法(以下、自家移植と言います)が施行できるかどうかで治療方針が異なります。

 一般的には若年(65-70歳が上限)で、十分な臓器機能が保たれている患者さんが自家移植の適応となります。

 まず導入療法を行い、その後自家末梢血造血幹細胞を採取・凍結します。

 十分な自家末梢血造血幹細胞が採取・凍結されたことを確認し、大量化学療法を投与したのちに、凍結していた自家末梢血造血幹細胞を解凍して輸注します。

 自家移植後に主に内服治療による維持療法を行うことがあります。


<移植非適応の患者さん>

 自家移植の適応とならない高齢患者さんや、何らかの臓器障害を有する患者さんでは化学療法を行います。

 抗CD38抗体併用化学療法が標準治療として選択されます。


<再発・難治性の患者さん>

 再発時にはさらに複数の治療選択肢があります。

 病態や病状によって治験・臨床試験の選択肢が存在する場合もあります。



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(4)臨床試験について

国立がん研究センター 研究支援センター  生物統計部長 柴田大朗

用語名 解説 資料・URL等
用語名 治験 解説

 新しい医薬品を世に出すためには、患者さんがその医薬品を使った時の副作用や効果に関する情報を集め、評価することが必要になります。そのための仕組みを臨床試験と呼びます。新しい医薬品を病院等で使えるようにするためには厚生労働省の承認が必要になりますが、その承認の判断根拠となる情報を収集する臨床試験を治験と呼びます。

 厚生労働省の承認が無く治験が実施されている段階の医薬品は、その有効性・安全性がまだ確認されていないため、治験の結果が芳しくなく効果が不十分であるとか、副作用の出かたが受け入れがたいようであれば厚生労働省からの承認が得られないこともあります。ただし、そのような状況であっても参加される患者さんへの不利益ができる限り生じないよう、厳格な管理のもと治験が実施されるルールになっています。そのために、患者さんが希望すれば常に治験に参加できるとは限らず、合併症の有無や様々な検査の結果によっては治験に参加できない場合があります。そのため、治験を実施している医療機関の医師によって参加できる条件を満たしているかどうか、確認が必要です。なお治験に参加する場合には、患者さんご自身が治験を実施している医療機関で治験の内容に関する丁寧な説明を受けた後に、文書による同意の意思表示を行い、その後正式な登録の手続きが進められることとなります。

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用語名 ランダム化・無作為化 解説

 新しい医薬品の効果や副作用等を調べるためには、既に医療現場で使われている治療法との比較や、場合によっては現在医療現場で使われる最善の治療法とプラセボと呼ばれる薬剤を模したもの(偽薬と言われることもあります)とを組み合わせた治療法との比較を行う必要があります。それが必要になるのは、患者さんの病気の経過が多様であり、新しい医薬品を使ったときの患者さんの状態の変化が、新しい医薬品の影響による変化なのか、病気の経過による変化なのかを判断することが通常は区別できないためです。また、比較をする相手の治療法を受ける患者さんの状態と新しい医薬品を受ける患者さんの状態との間に病気の重さや様々な検査結果の違いが大きいと、二つの治療法の間の違いが薬の影響による違いなのか患者さんの状態の差による違いなのかの区別がつきません。そのため、二つの治療法を受ける患者さんの状態が似た状況になるよう、患者さんや担当される医師の判断によらず、いずれかの治療法を作為無く割り当てる方法が採られます。それを専門用語でランダム化、あるいは、無作為化などと呼びます。治験の中には、全ての患者さんが新しい医薬品の投与を受けるものもありますし、ランダム化によって既存の治療法と新しい医薬品のいずれの投与を受けるかが決まるものもあります。なお、がん領域では、通常、効果が無い治療法(プラセボ・偽薬のみによる治療)と新しい医薬品との間でランダム化が行われる試験は行われず、少なくとも通常の診療で受けることの出来る治療と新しい医薬品との間でランダム化が行われます。病気によってはランダム化が非倫理的であると判断される状況もありますが、開発中の段階の医薬品の多くは、その効果が示せない、副作用が想定以上であるなどの理由で開発を断念することになり、新しい医薬品の投与を受けることが確実に良い治療を受けることになるとは限らないため、治験開始前に専門家による評価を受け、ランダム化が妥当であることの確認がなされています。

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用語名 盲検化・二重盲検化 解説

 既に医療現場で使われている治療法と新しい医薬品を比較する際に、どちらの治療を受けているかがわかると、効果や副作用の判定に事前の思い込みによる偏りが生じてしまうことがあります。例えば、新しい医薬品に対する期待が大きいと効果を過大評価してしまうことがあります。そのため、効果や副作用等の評価をする際に、思い込みによる影響が入らないよう、どちらの治療法を受けているかわからないようにして新しい医薬品の評価をすることがあります。その方法のことを盲検化(もうけんか)と呼びます。患者さんご自身と医師の両方がいずれの治療を受けているかわからない状態で行われる場合には、二重盲検化と呼ばれます。

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用語名 標準治療 解説

 ひとつひとつのがんに対して複数の医薬品が承認されていることがありますし、また、医薬品以外の治療手段が用いられることもありますが、そのような様々な治療方法のうち、専門の医師の間で最善の治療方法だと考えられている治療法のことを標準治療と呼びます。標準治療という表現から最先端の治療ではないと誤解される方も多いのですが、現時点での医学的な評価が確立した最先端の治療のことを標準治療と呼びます。なお、治験の段階にある新しい医薬品はその効果がまだわかりませんし副作用がどのくらい強いのかもわかりませんので、最先端の治療と考えるのは危険です。ただし、治験などで効果や副作用が詳しく調べられ、既に医療現場で使われている治療法より良いものであることがわかれば、それが新しい標準治療として受け入れられていくことになります。

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用語名 プラセボ 解説

 プラセボとは薬剤を模した、人の体に医薬品として作用しないものを指します。偽薬という表現が使われることもあります。どのような治療法を受けているかを知っていることが患者さんの身体的・心理的反応や日々の行動、効果や副作用等を判定する医師の判断に影響を与えることがあります。そのような影響で新しい医薬品の影響を過大評価・過小評価することが無いよう、プラセボを用いた治験がなされることがあります。なお、重篤ではない疾患の場合には一切の治療なしに(日常診療で受けられる治療よりも治療効果が劣る可能性がある状況で)プラセボが使われるケースがありますが、がん領域の治験では通常は日常診療より劣る治療がなされること(一切の治療なしにプラセボだけが使われること)はありません。それぞれのがんに対するその時点での最善の治療にプラセボを上乗せする形のプラセボ投与がなされることが一般的です。

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用語名 第Ⅰ相、第Ⅱ相、第Ⅲ相 解説

 医薬品の開発は段階を踏んで行われます。がん領域の新しい医薬品の開発は、一般には、患者さんを対象として副作用等の毒性を調べたり、患者さんが耐えられる用量を調べたりする段階(第Ⅰ相)を経て、特定のがんに対する短期的な効果を探索的に調べる段階(第Ⅱ相)、がんが大きくなるまでの時間や患者さんがご健在の期間に与える効果を調べて新しい医薬品に効果があることを検証する段階(第Ⅲ相)の3つのステップで進められることが一般的です。

 ただし、最近はこの3つの段階のそれぞれを組み合わせた治験(第Ⅰ/Ⅱ相試験と呼ばれる治験や、第Ⅱ/Ⅲ相試験と呼ばれる治験など)が行われるケースや、第Ⅰ相の治験に参加される患者さんの数を増やし、その情報から新しい医薬品の効果を確認するという例外的なパターンもあります。そのため、一般には第Ⅰ相よりも第Ⅲ相の段階の治験の方が新しい医薬品の効果や副作用に関する情報が多く知られている傾向にありますが、参加を希望される治験毎に状況が異なる場合もあります。

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用語名 探索的試験、検証的試験 解説

 医薬品の開発は一つの治験結果だけで終わることはまれで、通常は効果や副作用等の傾向を調べる段階を経て、既存の治療法との比較を通して確かに効き目が存在することの確認をする段階へと進みます。この前者の治験を探索的試験、後者の治験を検証的試験と呼びます。一般的には第Ⅰ相、第Ⅱ相の治験を探索的試験、第Ⅲ相の治験を検証的試験と呼ぶことが多いです。逆に、がん領域では、ランダム化試験は検証的試験であることが多いですが、時に探索的試験でランダム化が行われるケースもあり、ランダム化試験であるから開発の段階が進んでいるという場合ばかりではありません。個別の治験に参加される際に、どのような段階の治験であるのかを確認して頂くと良いです。

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用語名 適格基準、除外基準 解説

 治験の段階での新しい医薬品の効果や副作用等の出かたは不確実です。そのため、患者さんの安全を守るよう合併症の有無や検査結果等に基づき一定の条件を満たす方のみが治験に参加できるよう設定されることが一般的です。また、効果を厳密に評価するために参加できる患者さんの条件を定めている場合もあります。このような条件のことを、適格基準、除外基準などと呼びます。医薬品によって異なりますが、一般的な傾向として、第Ⅰ相の段階の治験よりも第Ⅲ相の段階の治験方が参加できる基準が緩やかになっています。

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